畦歩く者

     精神の確立は強靭な理性による。
    声高々にそう宣うそれを遠い世界に追いやって、果てのない空を眺めていた。

     本能の引力に耐えかねて、堕ちる者は腐るほど居る。
    そして、多くの場合それを咎める者は居ない。
    ゴシップには気をとられる癖して、救済信号を無視する……。
    そんな都合のいい存在の集まりがこの世界である。
     ひっきりなく暴れまわる鼓膜にくしゃりと顔をしかめ、虚空に手を伸ばしてみる。
    誇らしげプリーストが語る導きの天使は来ない。
    ――咎人は救わぬ。
     ザッと吹き抜けた風は嘲笑のよう。
    歪んだ顔をさらに歪めた。
     産めよ殖やせよ教の第一の信者である神は、絶対であるのだ。
    本能のプログラム上それが正常で、正義である。
    優劣に固執せず、数さえ増やせばそれでいいのだ。
    例え、望まれず放棄される存在が増えたとしても神は無関心に徹している。
    ――裁かれるべきは誰だ?
     自立生命体を産み出すことだけが生産性か。
    その道を外れたものは例外なく、失敗作か。
    黙りを決め込むならばそれまで、と茶けた聖書を引き裂いた。
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