Vanish 2. 怠惰
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「哀れなものよ」
虚空の座から羊等を見下ろせば、邪眼を得た夷狗が目に留まった。
「私は与えたというのに」
創世主は全ての痛みを消え去る,万能の霊薬を与えた。
悪しき蛇が寄らぬように,無垢な贄であるために,究極の救いを与えた。
だのに何故,自ら棄てる?
7つの扉を潜りて罪を消し,潔白の者として我が膝元に来るのを恐るるのか?
拒めば煉獄に投げ入れられ恒久の塵となるだけぞ。あるいは,その背を破りて禍々しく歪な翼が生え,悪しき蛇の舌の上で踊らされるのみよ。
「憐れなものよ」
何が彼を失楽園に近づけたか分からぬ。
我が庇護を受ける者に悪戯に近付くほどきやつらは能無しではない。
されば,憐れなる子自ら望んだのであろう。
「何故,既に絶えし幻を糧とするか」
救いの手は堅く閉ざされている。